012 「高い国」ではなくなった日本 - 国際的な物価水準

1. 唯一物価が停滞する日本

日本の製造業は、一方的な海外進出が進み、産業の空洞化が進んでいると言われます。
海外進出とは、海外に現地子会社などを設立し、生産拠点などを移すことですね。

製造業の場合は、多くは安い労働力や、海外市場を開拓するために海外進出が加速していると言われています。
1990年代に日本が極端に物価比率が上がって、割高な国となった事が大きいともいわれていますね。

今回は、そんな物価比率の変化を見てみましょう。
日本は長年物価が停滞しているという事は良く知られている事実ですね。

GDPデフレータ 1980年基準

図1 GDPデフレータ 成長率

上のグラフは、物価の指標であるGDPデフレータについて、19801年を基準(1.0)とした成長率(倍率)を示しています。

他の先進国の物価が上昇し続ける一方で、日本の物価は1990年代をピークにしていったん減少し、停滞しています。

2014年以降やや上昇傾向ですが、1990年代の水準すら超えられておらず、むしろマイナス成長という事ですね。
1980年とほとんど変わらないという驚くべき状況です。
物価とは販売価格を総合したものですので、いかに日本が安さを求めてきたかがわかります。

一方で、他国は物価上昇が当たり前ですので、国同士の相対的な物価水準の関係も変化していることになりますね。

2. 物価比率という指標

各国で物価成長率の比較は良くされますが、そもそも国同士での物価水準が異なります。
成長率ばかり比較してみても、実際的な物価水準がどの程度なのかの比較にはなりませんね。

例えば、物価が高いと言われるスイスを思い浮かべてみましょう。
同じような食事をしようとしても、日本で1000円程度で食べられるものが、スイスだと2000円相当だったりします。
このような、国を跨いでの物価の違いは、物価比率(Price Level Ratio)と言われます。

物価比率

図2 物価比率

上のグラフは、主要先進国の物価比率を表したものです。
物価比率とは、購買力平価を為替レートで割って計算されます。

物価比率 = 購買力平価 ÷ 為替レート

モノやサービスの取引レート(購買力平価)が、お金の交換レート(為替レート)に対してどれだけ割安/割高かを表す指数だととらえてください。

このグラフはアメリカを基準(1.0)とした場合の、各国の物価水準を倍率として表現されます。
1より高ければそれだけアメリカよりも物価水準が高い事を示します。

実は、日本の物価比率は、1985年のプラザ合意による急激な円高もあってバブル期の1985年~2000年ころまで極端に高い水準に達します。
当時は物価が高くて有名なスイスよりも高い国だったことになります。
為替レートが94円/ドル程度となった1995年には、アメリカの1.9倍近くに達しています。

他の主要国から見れば日本は割高な国でした。
逆に日本から見れば、他国の物価が安く感じたわけです。
当時、アメリカの有名な高層ビルを日本企業が購入したなどの話題がありましたが、こういった物価比率の違いなども背景にあったようですね。

当時日本は本来同じような経済水準にもかかわらず、物価が非常に高かったことになります。
当然、そこで作られたモノやサービスも割高となりますので、輸出で不利になります。

このような状況は国内の割高な環境で作るよりも、海外で現地生産をする大きな動機となったと言われていますね。

しかし、1990年以降、他国の物価が上昇し続ける中、日本だけ物価停滞が続きましたので、相対的な物価比率も下落傾向が続きます。

近年ではアメリカを下回って、他の主要先進国並みに落ち着いています。
2022年には円安傾向が大きく進んだこともあり、日本は極端に物価水準が下落していますね。

ドイツと同程度で0.7くらいです。
これは、1970年代と同じくらいに逆戻りしたような水準です。

ここから言えることは、既に日本の物価比率はかつてのように高いわけではないという事です。
以前のように日本で作ると高いから売れない、という事態は既に収束しているように見受けられます。

今後日本で生産し、輸出という手段で成立するような事業が増えていくかもしれませんね。
安全保障上も国産の重要性が増す中、重要な変化と言えると思います。

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