014 製造業の労働生産性 - 国際比較による日本の立ち位置
1. 労働生産性とは?
「生産性」という用語が良く用いられるようになりました。
生産性とは基本的には、投入量(インプット)に対する産出量(アウトプット)の比率で表され、効率を表す幅の広い言葉です。
今回は、労働者1人あたりの付加価値である「労働生産性」について、国際比較してみたいと思います。
まずは、労働者1人あたりの経済全体の付加価値であるGDPの金額です。
図1 労働者1人あたりGDP 名目 為替レート換算 2021年
(OECD統計データより作成)
上図は国内で生産された付加価値の合計であるGDPを、労働者数で割った労働者1人あたりGDPです。
日本は73,387ドルで、先進国の集まるOECDの中では平均値未満の低めの水準ですね。
同じ工業国であるドイツとは2割程度差がありますし、アメリカとは2倍以上の差があります。
日本の生産性が低いというのは、こういった数値からも確認できますね。
2. 製造業の労働生産性
つづいて、私たち製造業の労働生産性について確認してみましょう。
図2 労働者1人あたりGDP 製造業 名目 為替レート換算 2021年
(OECD統計データより作成)
図2がOECD各国の製造業の労働生産性です。
製造業のGDPを、製造業の労働者数で割った、労働者1人あたりGDP(付加価値)となります。
日本は98,180ドルで、図1の全産業の平均値からすると随分と生産性が高い事がわかります。
製造業は全体的に生産性の高い産業と言われますね。
また、国際的な水準を見ても、OECDの中で図1の順位よりも高い33か国中17位です。
イタリアを上回り、OECD平均値も上回りますね。
産業の中でも製造業は健闘している方だという事がわかります。
ただし、他の先進国と比べると、相対的な生産性はやや低い方になりますね。
3. 製造業の生産性の推移
続いて、製造業の労働生産性について、時系列の推移をご紹介します。
図3 労働者1人あたりGDP 製造業 名目 為替レート換算
(OECD統計データより作成)
図3がG7各国と韓国の製造業における労働生産性の推移です。
日本(青)は急激な円高もあり、1990年代にかなり高い水準に達し、その後も緩やかに増加傾向となります。
一方で、他国はその日本に2000年代に追いつき、近年ではやや上回るような推移となっていますね。
日本は1990年代に経済のピークがあり、その後停滞傾向が続いています。
製造業の生産性でもその傾向が良くわかりますね。
現在相対的に生産性の低い状況というのは、この停滞傾向の中でのことですので、今後もこの傾向が続けば、他国との差が開いていく事になるかもしれません。
今回ご紹介した労働生産性は、労働者1人あたりの付加価値を表すものです。
これは付加価値生産性とも呼ばれます。
一方で、数量的な生産性も存在しますね。
一定期間に生産する数量を示す指標となりますが、このような指標は物的生産性とも呼ばれます。
日本の製造業は、おそらく物的生産性では極めて高い水準に達していると思います。
一方で、その物的生産性をうまく付加価値(≒粗利=売値-仕入値)に変換できていないのかもしれません。
製造業の課題を表す興味深いデータと言えそうですね。
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