011 「安くて良いもの」は正しい!? - 下がり続ける製造業の物価
1. 日本の製造業の物価
今回は、製造業における価格の硬直性について詳細な物価の観点を眺めてみたいと思います。
図1 GDP 経済活動別 デフレータ
図1は経済活動別の物価指数を表すデフレータです。
それぞれの経済活動のデフレータを総合したものが、いわゆるGDPデフレータになりますね。
実は産業別にもこのような物価指数が集計されていたというのはご存じでしたか?
日本は物価指数であるGDPデフレータ(黒)が長期間停滞し続けています。
詳細に見ると、1997年あたりからいったん減少傾向が進み、2014年あたりから少し上昇傾向になっています。
私たち製造業のデフレータ(緑)を見ると、実は下がり続けている事がわかります。
物価指数であるデフレータが下がるという事は、その産業の取引価格が減少している事を示しますね。
1994年の水準に対して、現在は7割程度という事になります。
2015年に多少上がっていますが、その後また減少に転じています。
情報通信業(青)も減少が続いていますね。
実は情報通信業の物価低下は、先進国共通の傾向です。
しかし、製造業の物価低下は日本特有となります。
他国のデフレータは今後ご紹介します。
以前の記事でも、販売価格の硬直性についてご紹介しましたが、産業として総合的に見てもこのような価格が上昇しない傾向が継続してきたことになります。
2. 業種別に見た価格の傾向
実は、物価指数であるデフレータは、製造業のうち更に細かい業種別にも集計されています。
図2 GDP 製造業 デフレータ
図2が製造業の業種ごとのデフレータです。
多くの業種で、若干マイナスながら横ばい傾向であることがわかりますね。
電子部品・デバイス、情報・通信機器は大きく下落し、1994年の水準に対して0.1程度となっています。
つまり、価格の水準が10分の1程度にまで下落しているという事になります。
実はデフレータは、性能面の向上分も加味されているそうです。
つまり、半導体や情報通信技術の発達によって、以前よりも性能が上がった分だけ、単位性能あたりの価格が大きく減少しているという見方になるそうです。
ただし、電気機械(0.5弱)や化学(0.7弱)などは減少傾向が継続している分野ですね。
半導体や情報通信産業の特有の傾向があるにしろ、全体として値段が減少・停滞している事には変わりありません。
近年では金属製品や一次金属などがやや上昇傾向のようです。
日本の製造業は特に価格の硬直性が強い印象ですね。
この20年ほど、とにかく「安くて良いもの」ばかりを求めて疲弊してしまっているようにも見えます。
しかし、サプライヤーの淘汰が進んだり、海外との相対的な物価が低下するにつれて、従来の価格が維持しきれなくなる産業も増えてくるかもしれません。
今のうちに「売値と仕入値の適正価格」を今後数十年の取引まで考えたうえで、棚卸してみると良いかもしれませんね。
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