007 町工場の変化と生産性 - 小規模事業者の淘汰

1. 国内製造業の変化とは!?

今回は国内町工場の減少と中小製造業の生産性について考えてみましょう。
まずは製造業が現在までにどのように変化してきたのか、統計データを見てみましょう。

図1は国内製造業の企業数、図2は労働者数の推移です。

日本 法人企業 製造業 企業数

図1 日本の製造業の企業数
法人企業統計調査より

日本 法人企業 製造業 労働者数

図2 日本の製造業の労働者数
法人企業統計調査より

日本の製造業は1990年代中盤をピークにして、企業数も労働者数も減り続けているのが実情のようです。
企業の大部分は中小零細企業が占めますが、約45万社から35万社ほどに減少してしまっています。

中堅企業も大企業もタイミングはやや異なりますが、2000年代をピークに減少しています。

労働者数で見ても減少傾向は一目瞭然です。
全体としては1990年代に1400万人の労働者だったわけですが、2020年には1000万人を割り込んでいて、400万人以上が減少している事になりますね。

そのほとんどは中小零細企業の労働者です。
中小零細企業の労働者は1990年代には900万人近くですが、2020年には500万人ほどに激減しています。

このように、小規模な企業ほど減少傾向が進んでいると言えそうです。

2. 企業規模による生産性の格差

日本 法人企業 製造業 平均給与

図3 日本の製造業の平均給与
法人企業統計調査 より

日本 法人企業 製造業 1人あたり付加価値

図4 日本の製造業の1人あたり付加価値
法人企業統計調査 より

図3、図4は、法人企業の結果をまとめたもので、それぞれの企業規模での労働者一人あたりの平均給与と労働生産性(年間)のグラフです。

この労働生産性は、経理や事務などの間接労働者も含めた労働者全体での平均値となります。
職人が稼ぐべき時間単価とは異なりますので注意が必要です。

グラフから企業規模による格差がはっきりと見て取れます。平均給与も労働生産性も、中小零細企業と大手企業では、大きな差があります。平均給与は25倍程度、労働生産性では2.5~3倍程度の開きがありますね。

労働者一人あたりでみると、1990年代後半以降平均給与も労働生産性もほとんど変化がありません。

また、労働生産性は、2009年に大きく変化していますが、これは明らかにリーマンショックの影響と言えそうです。
この影響の度合いも、規模によってはっきりとした違いが見て取れます。

規模が大きくなるほど、2009年の減少幅が大きいのです。
零細企業ではほとんど影響を受けていないことが分かると思います。

3. 生産性が低いのは対価の問題?

淘汰の進む中小の受託製造業ですが、その原因の多くは労働生産性の低さにあるようです。
以前述べたように、労働生産性とは一定期間に稼ぐ付加価値です。
これは効率が悪いというよりも、対価が低い事が大きいように思います。

付加価値の分配が給与です。
多くの零細事業者では、給与の水準も低くなり、生活が成り立たないため後継者もなく廃業する企業が多いのが実態ですね。
あるいは、十分な付加価値を稼げないため、会社を維持できなくて倒産する企業も多いのが実情です。

その最も大きな要因が、顧客との「値付け」に関する交渉が適切に行われていない事ではないでしょうか。
生産性が低いのは、仕事に対して十分な対価が得られていない状況と言えます。
あるいは、対価の割には時間や手間をかけすぎているとも言えますね。

・無償で遠方まで納品・材料引き取りなどを行う
・送料は無料
・設計費は無償
・金型費用など初期費用は無償、あるいは折半
・厳密な検査を行い、1個でもNGがあればロットごと廃棄・作り直し
・品質管理のための膨大な書類作成
・過剰梱包、過剰洗浄、過剰管理
・手形を割るためのファクタリング費用

上げればキリがありませんね。
ほとんどが対価に含まれず、受注側が自主的に無償で行っているケースが多いようです。

以前は、発注元からのコストダウン要求が強かったともいわれています。
しかし、現在は受注する業者が勝手に安値合戦をしてしまい、結局は利益の出ない値段で仕事を受けることが常態化してしまっている面もあります。

当社では、4,500円/時間が標準です。
これは、日本人の労働生産性の平均値から算出される妥当な「値付け」と言えます。
製造業であれば、本来6,000~8,000円/時間を目指すべきですが、現在は4,500円/時間です。
実はこの単価でも「高い」と言われることが多いのです。

値付けについての感覚が、発注側、受注側共にマヒしてしまっているのかもしれませんね。

発注側、受注側がパートナーとして継続的に双方発展していくために必要な取引金額とはどの程度なのか、見直す時期に来ているのかもしれませんね。

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