010 淘汰される町工場 - 小規模事業者の激減する製造業

1. 小規模事業者ほど淘汰が進む日本の製造業

今回は日本の国内製造業の変化をご紹介したいと思います。

実は日本の製造業は大手企業をはじめとして海外進出が進んでいますが、国内は縮小傾向が続いています。
その中でも、町工場といわれるような中小製造業が極端に減少しているのが実態のようです。
今回は、具体的な統計データを見ながら、その状況を可視化してみましょう。

日本 製造業 事業所規模別 事業所数

図1 日本 製造業 事業所規模別 事業所数
(工業統計調査 より)

図1は、事業所規模別の事業所数の変化をグラフ化したものです。
1998年(青)と2020年(赤)の数値となります。

なんと4~29人の小規模事業所が、約32万事業所から約14万事業所へと6割以上も減少しています!

30~39人の事業所も約2割減少しています。
それ以上の事業所もほとんど変わらないか、あるいはやや減少傾向です。

日本 製造業 事業所規模別 従業者数

図2 日本 製造業 事業所規模別 従業者数
(工業統計調査 より)

図2が事業所規模別の従業者数です。

やはり淘汰の進んだ4~29人規模の従業者は激減していますね。
1998年から2020年で約半分になっています。

30~99人規模でも約2割減です。

統合などによって、規模拡大しているのかと思えば、それ以上の事業所規模でもどちらかといえば人数が減っていることがわかります。このように、日本の製造業は、主に小規模事業者が淘汰されつつ、全体として縮小している傾向にあるようです。

これは、私が日々感じていることとも合致します。
数人程度で、スピーディーに低コストに仕事を受けている町工場が近年急速に減少しているのです。

身近な例だと、汎用旋盤や、黒染め、スポット溶接などの町工場がなくなり、思い通りの仕事ができなくなってきているのです。

2. 規模の経済は正しいのか?

「小規模企業は、業務効率が悪く、生産性が低い。だから、統合して生産性を高めるべき。」という意見もあるようです。
確かに「生産性」だけに着目すれば、それは合理的かもしれません。
特にヒト、モノ、カネを集約し、分業・効率化を進めて、規模を拡大するのは資本主義経済の基本ですね。
製造業はそれを最も体現する産業でもあります。

ただし、当事者として感じるのは規模が拡大するほど、その隙間のニッチ産業が広がるという事実です。
規模が大きいとむしろできない仕事も増えていきます。
つまり、「小規模だからこそできる仕事がある」ということですし、それこそが多様性とも言えるのではないでしょうか。
すべての企業が合理化を図り「規模の経済」を志向すれば、失われるのは「多様性」や「冗長性」ですね。
これは、豊かな社会といえるでしょうか?

むしろ、日本の経済は、大企業の規模の経済によるアウトプットをインフラとして活用しながら、中小企業が高付加価値なビジネスを展開していくべき時代になっているように思います。
人口の減る日本では尚更ですね。

日本 製造業 事業所数・従業者数・付加価値額・1人あたり付加価値 変化

図3 日本 製造業 事業所数・従業者数・付加価値額・1人あたり付加価値
(工業統計調査 より)

図3は製造業の事業所数、従業者数、付加価値額(GDP)、1人あたり付加価値(生産性)を、1998年を100%とした変化として表現したグラフです。

先ほど見ていただいた通り、主に小規模事業者が淘汰されたことによって、事業所数は約半分、従業者数は約2割減、付加価値額(GDP)は約1割減っています。

そして皮肉なことに「生産性が低い」とされる小規模事業者が淘汰されたため、全体の「生産性」は向上しています。
生産性は向上していますが、同じだけ多様性が失われていますね。
そして、安い値付けの仕事も消えていっています。

このような淘汰が進むことで、極端に安価な仕事を引き受けていた町工場が減りました。
残りの業者は、「それでも安値競争を続ける町工場」と、「高付加価値路線に切り替えた町工場」です。

当然ですが、前者はさらに淘汰が進み、後者の割合が増えています。
発注側からすると、今後どの事業者が継続していけるか見えない状況ではないでしょうか?

後者の町工場は、主に「世代交代」を機に事業内容や取引相手を変え、高付加価値化している企業が多いようです。
一方、前者は経営者や従業員も高齢化が進み、なかなか変化に対応できていません。

国内事業を主とする中小メーカーとしては、今のうちに高付加価値化を図りながら、今後取引していく仕入れ先も見定めていかなければいけませんね。
今までの”激安”町工場の仕入れ値に対して、今後30年以上継続できる取引価格は2~3倍になってもおかしくありません。
おそらく残された猶予はあと数年といったところでしょうか。

単に値段を叩くだけの取引関係は既に成立しません。
これからは、発注側と受注側が連携し、顧客に対してどのように価値を提供しているかを対等なパートナーシップの元考えていく必要があるのではないでしょうか?

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